川西屋酒造店 工場長 米山 繁仁 さん

 「神奈川での酒米作りには限界がある。でも、ここで作られた米でできるだけのことを精いっぱいやるのが私たちの仕事」

 

川西屋酒造店の米山工場長は言う。酒米農家と酒蔵は「お互い真剣勝負」であり、その年にどんな米が入ってこようと必ずうまい酒を造る! という信念を持つ。

 

もちろん農家は天候不順の年であっても長年の経験を生かし、できるだけ良い米を作る。この地で脈々と築かれてきた両者の関係は、きっと次世代にも受け継がれるはずだ。


川西屋酒造店 工藤 恵美子 さん

若水の稲刈りの日に欣三さんの田んぼを訪れたことが機会となり、現在は川西屋酒造店の蔵人として働いている工藤さん。

 

「米山さんに誘っていただいて行ってみたら黄金色の田んぼの中に『お米を作ってくれる人』、『お酒を造ってくれる人』、『それを商ってくれる人』、『最終的に口に入れる人』が揃ったんですね。

 

“米がたどる輪”がそこに見えました。自分が飲んでいるお酒は『欣三さんが作った米でできている』と、その日にようやく気がついた。そんな感じでした」



いわば〝飲み手代表〟として稲刈りに参加した工藤さんがどうして酒蔵に勤めることになったのか?

 

「稲刈りのときに米山さんが『ここまでやったからには、この米を洗いにおいで』ってポロっと言ったのを聞き逃しませんでした(笑)。ぜひやらせてください!ということで」

 

きっとその米洗い体験時に見事な働きぶりを見せたのだろう。そのまま蔵人になってしまったという。

 

「私がここで働けるのは日本酒が好きだったから。それは欣三さんたちが作ってくれたお米のおかげです。だから自分が日本酒の〝入り口〟となり、少しでも飲んでくれる人を増やして恩返しがしたい。お酒と人を繋げる人になりたいと思います」