特集「川西屋の酒造り」

本誌第6号の特集「川西屋の酒造り」の転載記事です。

仕込みから出荷までの光景を、蔵で働くみなさんの写真を中心にご紹介しています。

 

露木雅一さんへの「蔵元インタビュー」米山繁仁工場長・工藤恵美子さんの「蔵人特集」醸造責任者・二宮悠さんへの「蔵人インタビュー」もどうぞご覧ください。

川西屋酒造店

 

明治30年(1897年)創業。酒が食の旨みを引き出し、食が酒の味わいを高める「調和」に重きを置いた酒造りが信条。製造する全量が純米酒で、中でも「お燗で美味しい」熟成酒には力を入れており、格別の旨みが味わえる。代表銘柄は「丹沢山」と「隆」。

 

◆神奈川県足柄上郡山北町山北250

◆0465-75-0009

https://kawanishiya.wixsite.com/kawanishiya


【目次】

 

1.米を洗う

2.水を吸わせる

3.蒸す

4.麹を造る

5.槽で搾る

6.粕を抜く

7.きれいにする

8.出荷する

 

◎ 川西屋の休憩室

◎ 酒米農家さんの「若水」収穫風景


1.米を洗う

取材当日に行われていた酒造りを工程ごとに紹介していきます。まずは洗米からスタート! 米の糠をしっかり落とします。

これから川西屋酒造店が長年に渡り手掛けてきた、酒米「若水」の洗米が始まる。
これから川西屋酒造店が長年に渡り手掛けてきた、酒米「若水」の洗米が始まる。
洗米と掛水を自動で行うタイプの洗米機。
洗米と掛水を自動で行うタイプの洗米機。
洗米後はすばやく吸水! 複数の桶に水を張って待つ、蔵元のご子息・露木隆一朗さん。
洗米後はすばやく吸水! 複数の桶に水を張って待つ、蔵元のご子息・露木隆一朗さん。

2.水を吸わせる

浸漬工程では米に水を吸わせます。この日の酒米は地産の若水と阿波山田錦。少人数での作業ですが、機械化と蔵人同士の連携によりスムーズに進みます。

①米の入ったネットを水に漬ける髙橋由香理さん。設定した秒数だけ吸水させる。
①米の入ったネットを水に漬ける髙橋由香理さん。設定した秒数だけ吸水させる。
②吸水後は水を切ってから計量する。 数値はその都度、白板に書きつけていく。
②吸水後は水を切ってから計量する。 数値はその都度、白板に書きつけていく。

③黒いネットから出した米を、青コンテナ内の大きな白い袋に集積させる。
③黒いネットから出した米を、青コンテナ内の大きな白い袋に集積させる。
④白い袋ごとフォークリフトで吊り上げ、甑(こしき)に米を張り込むことができる仕様になっている。
④白い袋ごとフォークリフトで吊り上げ、甑(こしき)に米を張り込むことができる仕様になっている。



3.蒸す

朝8時、米の蒸し上がりです。釜屋の菊池晶哉さんが蒸米をスコップで掘り上げ、2階にある麹室や醪場、1階の酛場へと皆で手運びします。蔵人が米をガシっと抱え、一斉にダッシュする姿は圧巻の光景。この後の工程全てに関わる重要な蒸米だけに、緊張感のある時間でした。

①慎重に米の張り込み。
①慎重に米の張り込み。
②間もなく蒸し上がり!
②間もなく蒸し上がり!

③スコップで蒸米を掘り出す。
③スコップで蒸米を掘り出す。
④菊池晶哉さん&菊池茂明さんの兄弟コンビ!
④菊池晶哉さん&菊池茂明さんの兄弟コンビ!

【蒸米を2Fの麹室へ】

まずは麹用の蒸米を掘り出す。温度を下げるための放冷作業は手でほぐす。抱えて階段を駆け昇る…川西屋の味わいを決定づける麹造りのスタート!

①米を入れた桶を次々と手渡し。
①米を入れた桶を次々と手渡し。
②しっかりと、バランスよく担ぐ。
②しっかりと、バランスよく担ぐ。

③すばやく丁寧に。ほぐして冷ます。
③すばやく丁寧に。ほぐして冷ます。
④麹屋の茂明さんを先頭に麹室へ。
④麹屋の茂明さんを先頭に麹室へ。

⑤麹室へ続く階段は履物を替えて昇る。
⑤麹室へ続く階段は履物を替えて昇る。

【蒸米を1Fの酛場へ】

酛屋は工藤恵美子さん。若水栽培農家・加藤欣三さんの田んぼを訪れたことがキッカケで従業員となった工藤さん。微生物を育む、8年目の冬。

①作業展開が早い。次は酛用の蒸米!
①作業展開が早い。次は酛用の蒸米!
②作業の合間にふとこぼれる笑顔。
②作業の合間にふとこぼれる笑顔。

③酛場へは2人で運ぶ
③酛場へは2人で運ぶ
④待ち受けていたのは、二宮さん。
④待ち受けていたのは、二宮さん。


⑤酛の品温を測る工藤さん。
⑤酛の品温を測る工藤さん。

【蒸米を2Fの醪場へ】

冷却機を通った蒸米が、2階の醪タンクまで手持ちで運ばれていく。ここから「低温でゆっくりと発酵させて、醪日数を伸ばしていく」(二宮さん)。

①冷却機から出てきた米をほぐす。
①冷却機から出てきた米をほぐす。
②境田雅美さん(右)は事務仕事も兼任されている。
②境田雅美さん(右)は事務仕事も兼任されている。

③1階から2階へ、蒸米リレー。
③1階から2階へ、蒸米リレー。
④髙橋さん。特技は工場長直伝「菰巻き」。
④髙橋さん。特技は工場長直伝「菰巻き」。
⑤蒸米投入&櫂入れ。
⑤蒸米投入&櫂入れ。


4.麹を造る

麹造りは麹屋・菊池茂明さんのご担当。造りの時期、釜屋の晶哉さんと共に岩手県から来られています。この日は麹室で、種切りや床もみ作業を見せていただきました。

①種切り作業が始まった。この日の相棒は工藤さん。2人が同時に腕を振ると、スローモーションのように麹菌の胞子が落ちていく。奥が五百万石、手前は若水。
①種切り作業が始まった。この日の相棒は工藤さん。2人が同時に腕を振ると、スローモーションのように麹菌の胞子が落ちていく。奥が五百万石、手前は若水。

②蒸米全体に胞子を均一に付着させていく、床もみ。
②蒸米全体に胞子を均一に付着させていく、床もみ。

③まず五百万石の分を終え、一息つく(※弟子が師匠に叱られているわけではありません!)。
③まず五百万石の分を終え、一息つく(※弟子が師匠に叱られているわけではありません!)。
④床もみが終わると、積み上げた蒸米を敷き布で包み込む。さらに薄手の布団を掛けて保温する。
④床もみが終わると、積み上げた蒸米を敷き布で包み込む。さらに薄手の布団を掛けて保温する。


5.槽で搾る

酒造りの順番としては酛(酒母)や醪の工程がありますが、そこは別の機会に取材できればと思います。さて、いよいよお酒が搾られます。槽搾りの様子です!

①この日、槽で搾られるのは通称「赤丹」と呼ばれる 丹沢山の赤ラベル。阿波山田錦で造られた酒だ。
①この日、槽で搾られるのは通称「赤丹」と呼ばれる 丹沢山の赤ラベル。阿波山田錦で造られた酒だ。
②酒袋に程よい分量で醪を詰める晶哉さん。
②酒袋に程よい分量で醪を詰める晶哉さん。
③それを米山繁仁工場長が受け取る。
③それを米山繁仁工場長が受け取る。

④酒袋の口を折って、槽内に並べていく。
④酒袋の口を折って、槽内に並べていく。
⑤槽の上部まで到達。整然と並べられている。
⑤槽の上部まで到達。整然と並べられている。


6.粕を抜く

【粕抜き1人目】菊池茂明さん

①醪を搾った後に出る酒粕を抜いていく。まずは茂明さん。
①醪を搾った後に出る酒粕を抜いていく。まずは茂明さん。
②酒粕も商品となるため、きれいに取り出す必要がある。
②酒粕も商品となるため、きれいに取り出す必要がある。
③スルスルと美しい酒粕が。茂明さんの腕前は達人級!!
③スルスルと美しい酒粕が。茂明さんの腕前は達人級!!

【粕抜き2人目】工藤恵美子さん

①酒袋から抜く方が、自動圧搾機のときよりも大変とのこと。
①酒袋から抜く方が、自動圧搾機のときよりも大変とのこと。
②箱詰め、袋詰めと出荷形態も様々。用途により対応する。
②箱詰め、袋詰めと出荷形態も様々。用途により対応する。
③20キロ分を袋に詰め、軽快に台車に載せていく工藤さん。
③20キロ分を袋に詰め、軽快に台車に載せていく工藤さん。

【粕抜き3人目】米山工場長

①米山さん登場。詰め場と蔵との行き来でこの日も大忙し。
①米山さん登場。詰め場と蔵との行き来でこの日も大忙し。
②愛と厳しい言葉で蔵を訪れる人を魅了し続ける工場長。
②愛と厳しい言葉で蔵を訪れる人を魅了し続ける工場長。
③工場長には酒米農家さんを紹介いただいて以来、お世話になっております!
③工場長には酒米農家さんを紹介いただいて以来、お世話になっております!


7.きれいにする

取材では、「造る」作業と同じくらい「洗う」「拭く」といった作業を目にしました。その都度、現場をきれいにしていく皆さんの姿は凛としており、美しいものでした。

麹室の前から階段にかけてモップ掛けをする境田さん。
麹室の前から階段にかけてモップ掛けをする境田さん。

洗米などが行われた現場を水で流す。作業の手が空いたらすぐ掃除! の繰り返し。
洗米などが行われた現場を水で流す。作業の手が空いたらすぐ掃除! の繰り返し。

8.出荷する

詰め場では瓶詰め、ラベル貼りなどの作業が主にパート従業員さんによりされています。造られた酒が「商品」になる過程では、様々なプロの手を経ているのですね。

①瓶詰めは自動化されており、同時に8本までOK。
①瓶詰めは自動化されており、同時に8本までOK。
②チェックも怠りなく。異状は靏見さんが見逃がさない!
②チェックも怠りなく。異状は靏見さんが見逃がさない!

③「丹沢山 吟造り純米酒」のラベルを貼っているのは左側に靏見和枝さん、右側が渡辺悦子さん。正確で手早い。
③「丹沢山 吟造り純米酒」のラベルを貼っているのは左側に靏見和枝さん、右側が渡辺悦子さん。正確で手早い。
④師匠と弟子。
④師匠と弟子。
⑤大量の注文に対応するため、今日も全力フル回転
⑤大量の注文に対応するため、今日も全力フル回転

⑥この日は「湧深青(ユーシンブルー)」の出荷作業。商品名と瓶の色は、山北町にあるユーシン渓谷のイメージから。
⑥この日は「湧深青(ユーシンブルー)」の出荷作業。商品名と瓶の色は、山北町にあるユーシン渓谷のイメージから。
⑦左/工場長に会いにきた「ピー子」ちゃん。 右/「今、忙しいんだよ!」と言いつつ、嬉しそうにごはんをあげる工場長。
⑦左/工場長に会いにきた「ピー子」ちゃん。 右/「今、忙しいんだよ!」と言いつつ、嬉しそうにごはんをあげる工場長。

⑧現場では洗瓶などの作業をされている宇佐美幸夫さん。積み込みが終わり、今から得意先へ配達に出る。
⑧現場では洗瓶などの作業をされている宇佐美幸夫さん。積み込みが終わり、今から得意先へ配達に出る。
⑨蔵で造られた酒が、詰め場で「商品」となり、いざ出発! これから酒販店や飲食店を経由して私たちの元へ届く。
⑨蔵で造られた酒が、詰め場で「商品」となり、いざ出発! これから酒販店や飲食店を経由して私たちの元へ届く。


◎川西屋の休憩室

ちょっとひと息。暖かい休憩室で各々、時を過ごす。

午後3時の休憩室。のどを潤し、しばしの雑談タイム。
午後3時の休憩室。のどを潤し、しばしの雑談タイム。
午後4時45分。本日の業務をまとめているのでしょうか。静かな時間が流れています。
午後4時45分。本日の業務をまとめているのでしょうか。静かな時間が流れています。


◎酒米農家さんの「若水」収穫風景

2021年10月2日、南足柄で育てられた酒米「若水」収穫の日。先代の故加藤欣三さんから引き継いだ田んぼで、ご長女の智子さんを中心に作業が行われた。若水の栽培技術は、確実に継承されている。

コンバインを操る農家の福嶋智子さん。本誌第3号で紹介した父の加藤欣三さんから農業技術を受け継ぎ、 お米、イチジク、柑橘類、ブルーベリーなどを栽培している。
コンバインを操る農家の福嶋智子さん。本誌第3号で紹介した父の加藤欣三さんから農業技術を受け継ぎ、 お米、イチジク、柑橘類、ブルーベリーなどを栽培している。
収穫日の朝。若水の田んぼからの眺めは、矢倉岳が美しい。
収穫日の朝。若水の田んぼからの眺めは、矢倉岳が美しい。
欣三さんの妻・正子さん、 長女・智子さん、次女・陽子さんとそのお子さんが集結。
欣三さんの妻・正子さん、 長女・智子さん、次女・陽子さんとそのお子さんが集結。