goo-bit第2号で特集した、川崎市高津区「程塚きのこ園」程塚健さんへの再インタビュー。当時、二十代だった程塚さんも三十代となり、その口ヒゲにもますます磨きがかかってきた。

 

今回は約2年ぶりの程塚さんへの取材。前回、紙面では触れなかった「直売会」や、本人が『ホントうまいっすよ!』と言う「原木舞茸」について聞いた。信念を持つ川崎の若手農家のハナシ。 



JA向丘支店前で毎月第2・第4木曜日に開催される「向丘育ち直売会」の様子。キノコの季節には程塚さんの原木椎茸も販売される。
JA向丘支店前で毎月第2・第4木曜日に開催される「向丘育ち直売会」の様子。キノコの季節には程塚さんの原木椎茸も販売される。

程塚は、自らの原木椎茸を食べる消費者の〝顔〟が見えてこそ、自分の中のキノコ作りが完結すると考える。

 

「やっぱりエンドユーザーを見たい。その声を聴かないと(キノコ作りの)プラス技術になっていかないんです」。

 

そのために程塚きのこ園に併設した直売所の運営を続け、毎月第2・第4木曜日にはJA向丘支店前で他の若手農家と共に『向丘育ち直売会』を開催している。

 

「お客さんの顔が見られて、『美味しかった』と喜んでくれる。シンプルだけど、やっぱりそこが一番重要。人との繋がりが商売の第一歩ですから。そういう意味で僕が考える〝最終的な着地点〟は、100%直売で販売できることなんです」。

 

しかし同時に程塚は、『絶対的に信頼できる人』たちの存在を教えてくれた。この100%の中にはこの人たちが販売する椎茸も含まれる。

 

「ラ ターシュ ド ルージュさん(=第2号で紹介)や、自らここに仕入れに来られる方々がそうなんです。(その人たちを通して売ることは)自分で売ってるわけじゃないから当然お客さんの顔は見えない。でもその人たちが絶対的に信頼できるので、お客さんの顔が見えているのと同じなんですよ」

 



原木の味を知ったら、それ以外は作れない

「今では椎茸だけでなく、原木『舞茸』も作っています。舞茸はけっこう生産量を増やしてきているんですよ」

 

2年前の取材時はまだオープンにはしていなかったが、家族の力も借りて原木舞茸を作り始めたと話してくれていた。程塚が「ホントにうまい!」と言う原木舞茸の秘密⁉︎ とは。

 

「舞茸は直売所と注文だけで全部売り切れてしまいます。2週間でいっきに出てしまうんです。しかも春に出るか秋に出るかわからない。本当は年に2回出るんですが、どちらかに片寄るんですよ。

 

まだ研究段階なので、今後は時期をずらしてできるだけコンスタントに採れるようにしていきたいですね。僕は山登りをするので天然の舞茸を見つけて食べることもあるんです。でもうちの原木舞茸の方がずっと美味しい」

直売会にはお花の販売もあり、こちらも楽しめる。
直売会にはお花の販売もあり、こちらも楽しめる。


「なぜかというと、一番の食べ頃に収穫して提供できるから。とは言え、舞茸も椎茸も原木栽培は自然相手のものだから、環境にとても影響されやすい。特に舞茸は「出してよ!」って言われても、「いや出したいんだけど! 残業して出せるならいくらでも残業するんだけど!!」みたいな感じ(笑)。

 

でも、やっぱり原木の味を知ったら、それ以外は作れない。いかにキノコにとって良い環境を作り出すかが僕の仕事ですから。これからも都市農業の地の利を活かしてやっていきたいと思います」

 

「川崎発、原木椎茸&原木舞茸」の行く末が楽しみである。

 

 ※記事は2017年3月発行 goo-bit かわさき特集号より転載しました。